迷わず選べる出会い方
私は、サークルの合宿に参加し、集中授業を選択し、レポートを書き、バイトに明け暮れた。
帰省はもめごとのタネだ。こんな仕打ちがあるだろうか。
沖縄どころか、大洗の海にも連れて行かないつもりか。
京都の古寺どころか、水戸の借楽園さえ頭に浮かばないのか。
「オレ、練習」「なに」「なにが、う〜ん、なの」私は、ノッてこない彼にキッと冷たい視線を投げつけた。
「う〜ん……いや〜、練習と試合が終わったら、帰省しようと思っててさ」「私も旅行の後で、帰省するつもりだよ」「オレ、練習最終日の翌日のキップ、取っちゃった」「う〜ん……」夏休みに入ってしばらくした頃、私は彼の部屋にあがり込み、旅行雑誌をぺラペラめくりながら言った。
彼は野球部の練習が終わったところ。
汗だくのシャツをさっそく洗濯し、セッセとハンガーに通して干していた。
図体がデカイわりに、コマメなのだ。
「北海道もいいだろうねえ。
涼しそうだし、広〜い所で、ノンビリしたいなあ」「そうだ。
京都の古寺巡りってのも、風情があっていいんじゃない?プライベートだと、修学旅行とかとは全然違った良さが味わえるらしいよ」真っ黒に日焼けした彼は、チラリと私に目をやっただけで、またも、うんとだけのコミュニケーションに徹しだした。
だが、家族のほかのメンバーは、どうだ。
私が帰ったからといってシッポも振らないし、飛びついてもこない。
とにかく、私がいてもいなくても、どうということはない家族であった。
「ごめん。
わかった。
どっか、行こう」「行きたくないんでしょ。
無理しなくていい」「オレも行きたいよ。
どこ、行こうか?」「どこも行きたくない!」「そんな、困らせないでよ」「困らせたくて言ってるの、フン」子供顔負けのスネっぷりである。
が、実のところ、私も落としどころに困っていた。
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